当院では外科治療にも力を入れており、他院からの紹介症例もお受けいたします。
避妊、去勢手術および一般外科のみならず専門的な技術やが必要とされる整形外科、腫瘍外科にも対応できるように準備しております。これまでの経験と新しい知見を取り入れ最適な治療が行えるように努力しております。
過去5年間手術実績(避妊去勢は除く)
軟部外科300症例以上
子宮蓄膿症、帝王切開、胃拡張胃捻転、胃内異物、腸閉塞、直腸脱、胆嚢破裂、唾液腺破裂、会陰ヘルニア、臍ヘルニア、鼠径ヘルニア、腹壁ヘルニア、横隔膜ヘルニア、眼球摘出、眼瞼再建、チェリーアイ、全耳道切除、耳血腫、皮膚形成外科、潜在精巣、前立腺疾患、卵巣疾患、膣ポリープ、膀胱結石、会陰尿道婁、尿路変更術、内視鏡による食道梗塞除去
子宮蓄膿症
子宮は雌の腹腔内にあるY字型の生殖器官です。子宮蓄膿症は、この子宮内に細菌感染が起こることで膿が溜まり、さまざまな症状を引き起こす病気です。
原因
子宮内部の子宮粘膜に、大腸菌などの細菌感染が起こることが原因となります。
雌性ホルモンの影響を受けやすく、特に子宮粘膜が増殖している発情後期に細菌感染が起こりやすいため、避妊していない中高齢以上の犬、猫での発症が多いようです。

症状
開放性子宮蓄膿症 : 外陰部からの異常な(血液や膿状の)分泌物、多飲多尿、元気消失、食欲不振、嘔吐などの症状がみられます。さらに、重症になるとショックを起こし、死に至ることがあります。
閉塞性子宮蓄膿症 : 外陰部からの分泌物はみられず、腹部膨満や多飲多尿、元気消失、食欲不振、嘔吐などの症状がみられ、重症になるとショックを起こし、死に至ることがあります。外陰部からの分泌物の排出がないため、開放性子宮蓄膿症より症状が重くなってから病気が発見されることが多いようです。
治療
飼い主様の意向などによって手術を行なわない場合には、抗生物質やホルモン剤の投与などで内科的治療を行うこともありますが、改善しないことがほとんどです。
そこで、多くの場合外科は外科的に卵巣子宮摘出術(避妊手術)をすることで治療を行います。
治療が遅くなった場合は、子宮が破裂し腹腔内に膿が流れ出てしまうこともあり、致命的な経過をたどってしまいます。
子宮が破裂してしまったため、open abdominal drainageを実施した猫の症例
予防
発症に雌性ホルモンが関与している(加齢とともに繰り返される発情によって、子宮蓄膿症が発生する危険性が増加するといわれています)ので、若いうちに避妊手術をすることが予防につながります。また、陰部からの異常な分泌物や多飲多尿などの異常がみられた場合は、早めにご相談ください。
乳腺腫瘍とは
乳腺は、左右の乳頭に沿って存在する乳汁を分泌する分泌組織で、乳腺腫瘍はこの乳腺組織が腫瘍化することで起こる病気です。中高齢の雌に多く認められる腫瘍です。犬の場合、乳腺腫瘍の50%が良性で50%が悪性であり、猫の場合90%が悪性腫瘍の可能性が高いと報告されています。
原因
発症の要因として、雌性ホルモンやその他のホルモン、遺伝的体質などの影響があるといわれています。避妊していない中高齢以上の雌で、乳腺腫瘍の発症率が高いことが知られており、初めての発情の前に避妊手術を行うと乳腺腫瘍になる確率が非常に低くなると言われています。
症状
乳腺組織に「しこり」ができます。胸や脇の下、下腹部、内股までの乳腺に複数ヶ所できる場合もあり、悪性腫瘍の場合は腫瘍の増殖とともに皮膚が破け出血や壊死を起こしたり、リンパ節や肺や肝臓などの他の組織に転移する場合があります。
治療
外科的に腫瘍を手術で摘出します。早期発見、早期摘出が重要となります。良性腫瘍では、早期摘出で経過が良好な場合が多いですが、悪性腫瘍では、摘出しても再発や他の組織に転移をすることがあり、経過が悪い場合もあります。当院では手術で摘出する治療以外に、抗がん剤治療や免疫医療を行なうこともあり、またそれらの治療を手術と組み合わせて行なう場合もあります。
予防
発症には雌性ホルモンの影響があるといわれているため、若いうちに避妊手術をすることは乳腺腫瘍の予防につながります。また、日頃から体をこまめに触ることを心がけ、「しこり」がみられた場合は、早めに動物病院にご相談ください。

胃拡張(胃拡張胃捻転)とは
胃が拡張し、ねじれ(捻転)を起こすことからショック状態に陥る緊急性の高い病気です。特にグレート・デーン、ボクサー、ジャーマン・シェパード、セント・バーナード、ドーベルマンなどの大型犬や超大型犬で、胸が深い犬種に多く発生する病気です。
原因
はっきりとした原因は不明ですが、胃内に停滞する液体やガスの増加や食後の過度の運動による胃拡張が主な原因となり、胃拡張に伴って胃捻転を起こします。多量のドライフードを食べた後に水を飲むことにより、胃の内容物が膨張することが胃拡張の要因の一つなることもありますので食事の与え方には注意が必要です。
症状
胃が拡張するため、腹部が膨満し、嘔吐をしたくても吐物がでない状態になり、よだれを流します。その後、呼吸困難、目に見える部分の粘膜が白く退色する、脈圧が低下する、などのショック症状を起こします。そのまま治療をしないで放置しておくと数時間で死亡する場合がありますので、早急の治療が必要です。
治療
胃の減圧処置とショック状態の治療を行います。減圧処理は胃内にチューブを挿入、あるいは皮膚の上から注射針を胃内に刺してガスを排出します。ショック状態の治療にはステロイドの投薬や、静脈への点滴を行います。ショック状態が落ち着いたら開腹手術による外科的治療を行います。 一般的な手術は、捻転している胃を元の位置に戻すことと、再発を防ぐために胃を腹壁(お腹側の膜)に固定する手術となります。
予防
1回の食事で沢山の量を与えたり、食後すぐに運動をしたりしないようにしましょう。特に大型犬で胸の深いワンちゃんは注意をしてください。食事の回数を1回だけでなく、2回以上に分けることなども予防になります。
胃拡張胃捻転症候群は健康な大型犬であっても急にかかる、命にかかわる大変恐い病気です。
異物誤飲とは
犬猫は飼い主様が思ってもみないものを食べてしまうことがあります。特に子犬ちゃんは、色々なものを誤って飲み込んでしまうことが多いので充分に注意をしてください。異物誤飲での通院割合を調べたところ、1歳以上の犬と比べ1歳未満の犬のほうが異物誤飲で動物病院に通院する割合が4倍も高いことがわかっています。(アニコムデータラボ調べ2007.7.20)。異物誤飲をしてしまった場合に、その異物の種類によっては命に関わることもありますので注意が必要です。
原因
【異物誤飲の原因となりやすいもの】
竹串やトウモロコシの芯、果物や梅干の種、ヒトの医薬品、石、砂、靴下などの布類、紐など、ヒトの身近にあるものが多いようです。(アニコムデータラボ調べ 2007.9.21)。
症状
誤飲したものの種類や量、動物の体格や体質によって、現われる症状や症状が発現するまでの時間、重症度が異なります。誤食後に時間が経過してしまうと、治療が困難になる場合や症状が重くなる場合があり、場合によっては死に至ることもあるので注意が必要です。
誤食の症状は様々ですが、一般的に嘔吐や下痢、流涎(よだれ)、食欲不振、元気消失などの症状がみられることが多いようです。
治療
触診、エコー検査、レントゲン(X線)検査などで診断を行います。異物の種類によってはレントゲンに写らないものや写りにくいものもあり、判明が難しい場合がありますが、このような場合や腸閉塞などを疑う場合にはバリウム検査を行います。検査の結果により、便と一緒に異物の排泄を待つ場合もありますが、異物の種類や状態によっては早急に処置が必要なこともあります。
処置の方法としては、催吐処置(異物を嘔吐させる処置)や内視鏡による除去、もしくは胃切開などの外科手術などがあります。その他、液体や中毒の可能性がある異物を誤飲した場合には胃洗浄することもあります。また、異物による中毒症状などを起こしてしまった場合は解毒剤の投与や点滴治療などを行います。
予防
お家では普段から動物達の口の届く場所に飲み込みそうな物や興味を示しそうな物を置かない(子犬ちゃんは遊んでいるうちに食べてしまうことがあります)ことが大切です。また、散歩時などには、何が落ちているのか分からないような場所では、ワンちゃんの名前を呼んだり、リードを短めに持ったりして、しっかりとワンちゃんをコントロールしましょう。また、スプーンやフォークを使って食事を与えることや焼鳥などの竹串などに刺さったものをそのまま手でもって食べさせたりすることはスプーンや竹串などを一緒に飲み込んでしまう可能性があるため非常に危険です。
何か口にくわえていて誤食につながる可能性がある場合には、すぐに取り除きましょう。取り上げようとすると急いで飲み込んだり怒って噛みついたりする可能性もあるので、おやつや大好きなおもちゃなどで気をひき、好きなものと交換しして取り除くと良いでしょう。
万が一、異物を飲み込んでしまった場合、または、摂取したことが疑われる場合には、早急に受診することをお勧めします。また、異物が食品や薬物の場合は、内容の表示がある袋や箱を持参すると良いでしょう。その他の場合でも異物の一部などがあれば、治療方針の目安となりますので持参することをお勧めします。治療法については摂取した異物の種類や量、摂取後経過している時間によっても異なります。
腸閉塞とは
腸閉塞とは、消化管(胃や腸)の内容物がなんらかの原因で通過できなくなっている状態(閉塞)をいいます。閉塞の状態によっては腸の機能を障害し、命にかかわることもあります。
原因
腸閉塞の原因には、異物の誤食や腸重責(腸管がとなりの腸管の中に入り込んでる状態)、回虫などの腸内寄生虫の大量寄生、腹腔内の腫瘍、ヘルニアなどの原因があります。犬の場合、特にボールやオモチャ、日常生活品などの誤食が原因となって発生することが多く経験されます。
症状
腸の閉塞の状態によって、症状は異なります。一般的に頻回の嘔吐や食欲不振、腹痛などを起こします。腸閉塞により腸の血管の血液循環が阻害されている場合には重症となり、激しい腹痛やショック状態に陥ることもあります。
治療
腸閉塞の原因を取り除く治療となります。多くの場合、手術による外科的処置を行います。
閉塞によって腸管の血管の血行障害が起こり、腸管の壊死(腸管の組織が回復できないほどダメージが激しい状態)を起こしている場合は、その腸管部分を切り取り、腸管の端々を接合する手術となります。また、ショックなどを起こしている場合は、点滴などの処置を行い状態の改善を図ることが優先されます。
予防
腸閉塞の原因には異物の誤食が多いため、特に子犬の時期には身の回りに誤食するようなものを置かないようにすることが重要です。
また、寄生虫などが原因となることがあるので、定期的に検便を行いましょう。
上記のような症状がある場合は、重症になる前に早めに通院、検査を受けてください。
尿石症とは
尿石症は尿路結石症ともいわれますが、尿に含まれるリン、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル成分が結晶化し、腎臓、膀胱、尿道などの泌尿器で結石となるためにさまざまな症状を引き起こす病気です。特に猫では、尿がアルカリ性に傾くことでできるリン酸アンモニウムマグネシウム結石(ストラバイト結石)が多く見られます。
原因
結石の形成については、食事の種類や飲水量の減少、細菌の尿路感染、遺伝的体質などが原因であるといわれています。
症状
頻尿、血尿、発熱、食欲不振などが見られたり、排尿時に背中をまるめて痛がる様子が見られることもあります。しかしながら、最も気をつけなければならない症状は、結石が尿路に詰まってしまい、全く尿が出ない状態(尿道閉塞)になることです。この状態になると、血液中に尿中の老廃物が増加してしまう尿毒症を引き起こしたり、膀胱破裂を起こしてしまう可能性があります。また、時間の経過によっては命の危険性もあります。
治療
尿道閉塞の場合は、早急に閉塞の状態を解除する処置が必要となります。尿道内の結石を超音波で破砕したり、カテーテルを尿道に挿入する処置などを行うことがありますが、尿石の大きさや位置によっては外科手術で摘出する場合もあります。再発を繰り返す尿道閉塞に対しては、尿道を拡張する手術を実施することで、症状が改善します。
また、結石溶解や結石形成予防のための食事療法を行ないます。血尿がある場合は止血剤、尿路感染がある場合は抗生物質の投与など、症状を抑える治療を行います。
予防
次のことが尿石症の予防になるといわれています。
- 低リン、低マグネシウムの食事
- 肥満にさせない
- 飲みたいときに新鮮な水を飲める環境にする
- 排尿しやすい環境を作る
- 飼育環境中のストレス除去
また、日頃からのこまめな尿の観察や尿検査などの定期的な検診を行うことが大切です。尿の色や回数、臭いなどをチェックましょう。
会陰ヘルニアとは
会陰ヘルニアは、肛門の周囲(会陰部)にある筋肉の隙間から、お腹の中の臓器や脂肪が飛び出る病気です。肛門をはさんで両側性に発生することが多いですが、片側のみに発生する場合もあります。
原因
肛門の周囲(会陰部)の筋肉が薄くゆるくなってしまうために、その隙間から臓器や脂肪が飛び出てしまい肛門の周囲の腫れが見られる病気です。筋肉が薄くなってしまう原因に雄性ホルモンが関与しているといわれ、未去勢の中高齢犬で多く発生します。
症状
筋肉の隙間に臓器や脂肪が飛び出てしまうため、外観で肛門の周囲が膨らみます。飛び出ている臓器によって症状が異なります。多くの場合、腸管が飛び出るため、しぶりなどの排便困難の症状を起こしますが、膀胱や尿道などの場合、排尿困難や尿がでない等の症状が現れます。
治療
会陰ヘルニアの治療はほとんどの場合、外科的手術によって飛び出した臓器を元の状態に戻し、筋肉の隙間をふさぐ治療となります。当院ではポリプロピレンメッシュを用いてヘルニアの整復を行います。一般的に再発率は術後2年で20%以上と言われておりますが、本法を用いた場合の再発率は0%です。病気の発生に雄性ホルモンが影響しているため、未去勢の場合は再発防止のために、同時に去勢手術を行います。
予防
発症には、雄性ホルモンの関与があるとされているため、若いうちに去勢をすることが予防につながります。ご自宅では、排便・排尿状態のチェックをこまめに行ないましょう。また、排便困難や血尿などの異常がみられた場合は、早めにご相談ください。
横隔膜ヘルニアとは
横隔膜ヘルニアは先天性の場合もありますが、多くの場合猫が交通事故等によって強い衝撃を受けることなどで起こります。衝撃を受けることによって体の中で腹部と胸部を隔ていている横隔膜が破れ、腹部の臓器がその穴から胸の内部へ押し出されてしまうことを横隔膜ヘルニアといいます。ヘルニアとは、もともと穴のあいていないところが裂けたりすることによって、そこから穴の内側にあった別の組織ががはみ出すことを意味します。
原因
先天性が原因の場合は、生まれつき横隔膜の一部が欠損していることが原因となります。しかしこの病気の発症のほとんどは後天性で、交通事故や高いところからの落下事故等によって起こることが多いです。
症状
横隔膜ヘルニアによって胸の内部に腹部の臓器が入ってくると、進入した臓器の量にもよりますが、肺や心臓が圧迫されたり、横隔膜が無いために肺が膨らむことが難しくなり、呼吸困難になります。また、胃や腸などが胸の内部に押し出され圧迫を受けた場合、吐き気や腹痛等が見られることもあります。
治療
症状が見られる場合、直ちに外科的治療によって元の状態へ整復することが必要となってきます。
予防
交通事故や落下事故等に遭わないように、ネコちゃんを室内で飼う等の環境づくりが重要です。
帝王切開
微弱陣痛、破水後に子犬が出てこない等の場合は難産と診断します。
難産であるにもかかわらず、自然分娩にこだわり過ぎると、子犬だけではなく母犬の命にも危険が生じてしまいます。
当院では緊急の帝王切開に対しても受け入れ態勢を整えております。
まず、ご連絡ください。

帝王切開にて出産したハスキーの子犬達。傷も最小限なので早期に母犬も回復します